白衣について

白衣について

白衣とは?

 白衣、英語では“white coat”と言います。Coatというからには、「外衣」、つまりいちばん外側にまとう衣服が基本です。
 医療関係者などが業務用に着用します。
 色はもともと白でしたが、最近はブルーやピンクなど淡い色つきのものが多くなっています。
 

何のために身につける?

 白衣を着用する目的は、衛生、災害予防、制服としての役割などです。
 これらの目的のため、やや厚手の生地が好まれる傾向があります。
 素材には、汚れに強く、洗濯が容易なポリエステルがよく用いられますが、薬品に強く火が着きにくい綿もよく用いられます。
 なぜ汚れが目立つ白が基調なのか、不思議といえば不思議です。が、理由はあります。
 医療の現場では、患者の血液や血液以外の体液、汗や唾液などの飛沫が白衣に付着することがあります。
 そうしたちょっとした汚れにもすぐに気がつけるよう、あえて汚れの目立ちやすい服を着るのです。
 そうすることによって、医師や看護師の白衣を通した患者から患者への感染(交差感染)のリスクを低下させています。
 

どんな人たちが身につける?

 ドクター、ナース、臨床検査技師、薬剤師、保健師、栄養士といったパラメディカルなど医療関係者が中心ですが、そのほかにも多くの分野で着用されます。
 医療に隣接する分野では、マッサージ師、整体師、各種セラピスト、エステティシャンなども着用します。
 さらに大学や研究機関の理科系研究者、学校の理系教師、養護教諭なども白衣を着ます。
 中学校では、給食の配膳をする生徒が白衣を身につけることがあります。意外と広い範囲の人びとが身につけていることになります。
 

白衣の形

 医師向けとしては、文字通りコート型の、丈が膝下あたりまである長いタイプが一般的です。
 外来担当の医師が診察時に着用する場合が多いようです。
 コート型と並んで一般的なものに「ケーシー型」があります。
 セパレート式の上着で丈が腰より少し下くらいまでで、前がしっかり閉じられ、首まわりがタートルネック、半袖のものです。
 コート型だと手足を大きく動かす動作にじゃまになることがありますが、ケーシー型はコート型よりも動きやすくなっています。
 そのため、外科系の医師・歯科医師・男性看護師・臨床工学技士・作業療法士・理学療法士などに用いられることが多くなっています。
 女性看護師向けでは、ワンピース型がやや多く用いられているようですが、ケーシー型にパンツというスタイルも最近は多くなっています。
 テキパキした動きによく似合うスタイリッシュなデザインのものも多種多様にリリースされるようになってきており、
 激務に精励する看護師の士気高揚に役立っています。
 また、「スクラブ」と呼ばれるタイプもあります。半袖で首元がVネックになっている、形としてはTシャツに近い医療用白衣のことです。
 「ごしごし洗う」という意味を持つ“scrub”が語源で、強く洗っても生地が傷みにくい特徴があります。
 着替えも容易にでき、また一着のコストも低いため、バイオハザードの問題などで使い捨てにせざるをえない局面など、
 消費が激しい医療現場で好んで用いられます。最近では、医療の現場のみならず、エステサロンや介護の現場でもスクラブが導入され始めています。
 

ケーシー型白衣のルーツは床屋

 床屋さん、つまり理髪師もケーシー型白衣を着ています。実は、ケーシー型白衣のルーツはむしろ、床屋さんの方にあるのです。
 床屋は、“王など高貴な身分の人に刃物を持って近づける唯一の職業”ということで、昔から社会的ステータスの高い仕事でした。
 そして中世くらいまで、医者も兼ねていたのです。
 床屋の入り口に、赤、白、青の渦巻きがくるくる回っていますが、これは床屋が医師だったことのなごりで、赤は動脈、青は静脈をあらわしています。
 1960年代にアメリカの医療ドラマ『ベン・ケーシー』に出演したヴィンセント・エドワードが演じたベン・ケーシー医師が身につけていたことから
 「ケーシー型」と呼ばれるようになり、一般に定着しました。
 

手術衣の色について

 実際に手術を見学したことのある人も、テレビドラマでしか見たことがない人も、手術の時に執刀医以下のスタッフが着る服装と言って思い浮かべるのは、
 やや濃い目のブルーやグリーンの上下スクラブでしょう。
 白や淡いピンク、淡いブルーの白衣は、多くの医療機関で用いられていますが、こと手術の場面となると、あまり目にすることはありません。
 手術衣の濃い色には、大事な理由があります。それは、視覚効果です。
 まず1つには、強力な照明ライトの反射を防ぐためです。明るい色の服に光が反射すると、影ができるなど術野が見えにくくなります。これを避けるためです。
 また、もう1つの理由は「補色残像」です。手術中、医師は、血液や内臓のために赤色を基調とした術野を長時間見つめ続けなくてはなりません。
 集中して術野を見つめたあとに視線をはずすと、赤の補色である緑色の残像が残ってしまいます。
 これを「補色残像効果」といい、特に濃い色を長時間見つめたあとに、白い背景を見たときに起こりやすく、視界をチラつかせてしまいます。
 補色残像が生じると、目が慣れるまで手元がはっきりと見えないため、緊急を要する処置が迅速にできなかったり、
 思わぬところを傷つけてしまったりといったミスに繋がりかねないわけです。
 そのような理由により、手術着や手術室は、補色残像を起こしにくくする目的で、
 濃いブルーやグリーンを基調とした色着けとしたものが多くなったといわれています。


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